お江戸のベストセラー

花東(はなのおえど)頼朝公御入(よりともこうおんいり)

11

花東頼朝公御入 11

▼開

こうして、頼朝公は江戸見物を利用して悪人どもを片づけた。

鎌倉へ帰って、留守を守る重忠に江戸の土産をくだされたが、上に目録と書いて中身は黄色なものだとおっしゃるので、さては金だろうと思って開けてみれば──黄表紙の目録、次のごとし。

酉歳(とりどし)新板目録

孔子縞于時藍染(こうしじまときにあいそめ)(上中下)

無垢世界(むくせかい) 縞黄金肌着八丈(しまおうごんはだぎはちじょう)(上中下)

花東頼朝公御入(はなのおえどよりともこうおんいり)(上下)

一百三升芋地獄(いっぴゃくさんじょういもじごく)(上下)

鴫蛤(しぎとはまぐり) 鳴呼辛気楼(ああしんきろう)(上下)

板元 大伝馬町二丁目
   大和田安右衛門

めずらしき趣向、続々出板。お求めご覧くださるよう、お願い申し上げます。

注釈

黄表紙の目録、次のごとし
頼朝公のおみやげ目録の体裁で新刊本の広告をするという、なんともおしゃれな趣向になっています。
大和田安右衛門
作家として油の乗ってきた京伝を使って黄表紙の出板に乗り出した板元。この広告にある京伝の本はヒットしたが、人気の高い京伝先生の出板権が他の板元によって独占されてしまったため、結局あとが続かず黄表紙から撤退するハメになる。
江戸時代も大衆本が売れるようになって作家の商品価値が高まると「○○先生の漫画が読めるのは~」みたいなことがあったようです。