<解説>
作者、山東京伝は、江戸後期の町人文化が爛熟し暴走を始めた天明~文化期に活躍したベストセラー作家です。
もともとは絵師なので、この作品では挿絵も手がけています。京伝の黄表紙(大人向けの絵草紙)は、そのギャグ満載のお話がいつも大ウケしましたが、作者が自から描く登場人物の個性豊かなキャラっぽさも魅力のひとつでした。
『花東頼朝公御入』は、頼朝公が鎌倉武者をお供にして江戸見物に興じるという荒唐無稽なお話。
江戸では判官贔屓で義経に人気が傾いたためか、頼朝はあまりウケがよくありませんでした。歌舞伎などでも頼朝役はさほど注目を集めず、大部屋の役者があり合わせ的に演じるものだったようです。
そんな中、この黄表紙は頼朝を主人公にした貴重な作品です。
頼朝の「石橋山の戦い」や「富士の巻狩り」などのエピソードをもじって話が展開しますが、パロディというよりはただの語呂合わせなので、特に元ネタを知らなくても十分楽しめると思います。
登場人物は、みんな江戸弁まるだしのちゃきちゃきの江戸っ子です。鎌倉武者たちが花のお江戸で繰り広げる、きっぷのいいドタバタ劇!