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花東はなのおえど頼朝公御入よりともこうおんいり

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花東頼朝公御入 02

ここに
かま
くらの将軍源のよりとも公
四州をおさめ給ひしより
なびかぬくさ木もなく
臣下おほき中にも
岩永左衛門俣野五郎
きみをすゝめ
奉りてはなの
あづまへ御下り
あつて
江戸の
はん
ゑいを
上覧
あらはよいおなぐさみと
そこだくみあるままに
より/\申上ければ
よりとも公きやうにゑどへ
くだるべしとおふせ
いださるゝ

「いかに重忠
其方はかまくらに
のこつておれが
るすをかたく
まもれゑて
たびのるすに
女房を
ぬすまれる
ものだ

「御両所のおとも
なさるゝからは
御ぬかりはあるまいが
ねんのためさなだの与市を
つけてあげます

「さなだの与市は
よりとも
公の
御けらいかの
こいつは
大わらいだ

「ナンダ
さなだ
三味せん箱を
いわへるもの
じやねへか

「ともには
岩永と
またのを
つれるから
大じやうぶだ

「ナニサ
しげ印
われら両人も
おともする
からは
ちつとも
すいた事は
させ申さぬ

「このたびの江戸へ御下りは
大切のぎてこざればせつしやが
おともつかまつり
ましやう

「こふ上下を
いためつけて
すわつた所がなんとも
くいものはねへの
おいらやつはり
そくにねぎまて
あつがんがてんだ