お江戸のベストセラー

霞之隅春かすみのくまはるの朝日奈あさひな

8

霞之隅春朝日奈 08

※本文の赤字部分は、早稲田古典籍総合データベースで補完しています。

朝いなは手長
嶋がぬす人こん
じやうのある事
をしりごにちの
なんぎをおそれ
て国へかへさんとおもへども
ゑんろのことゆへたゞもかへ
されまじとよいほどに路
用金をつかはしさう/\
内をおひ出すこれ手切
かねのはじめなり又ぬす
みするものを手が長い
といふも此ときよりぞ
はじまりける

「一ときも
おくことは
ならぬこれを
もつて出て
うしやう

「きのふやけふのこと
かいな左りのかいな
右のかいなかいなく
たん名こそ
おしけれ

アヽめんほくもない
今めがさめました
手の長いははなの
下の長
にはおとり
でござり
ます
アヽ
うでが
かたきの
よの中
じや
ナア
「あたまを
かくにさへ

おもくて
かゝ
れぬ

これくろさん
おめへの
目つきにやァ
やつがれ
すこし
きた山
しぐれだ

いけすかねへくろんぼうなの
かのといつてくんなさんな
そりやァむかしのこつたァナ

くろん
ぼうの女
今はうつくし
きしろものと
なり
ちとうぬほうさ