小人島は、もの珍しそうにそこら中を見て回っていたが、突然の大風に吹き飛ばされて裏の井戸に落ちてしまった。
朝比奈が大あわてで助けようとしたが、どうにもしようがない。
すると、手長島が「ここぞ、わが見せ場」と片肌ぬいで井戸の中へ手を突っこみ、やすやすと小人島をつまみ出した。これには、みな感心する。
手長島「それ、ご覧じろ。なったりなったりと三べんかき回しますと、たちまち小人島が出ます。」
女護島「おやおや、けしからぬ(すごい)深い井戸だの。」
女護島が井戸をのぞき込もうとするのを、朝比奈があわてて引き止めた。
朝比奈「これ、べらぼうめ! 井戸をのぞいて、また父なし子を孕もうとする。井戸の深いより、てめえが湿深いわ。」
女護島「深井戸もその味わいを知らずは、どうでござります。」