お江戸のベストセラー

霞之隅春かすみのくまはるの朝日奈あさひな

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霞之隅春朝日奈 01

それ、猟師の佐次兵衛は四国をめぐって猿となり小林の朝比奈は異国をめぐって、猿隈さるぐまでその名をとどろかす。
着物の鶴の羽かき合わせ、力自慢の肘を張る(春)の日、朝比奈はふと思いつく。
「もう一度異国へ渡って、こんどは異人を日本へ連れて来たら大ウケだろう。こいつは新しい!」
てなわけで、さっそく用意を始めた。

世の中に寝るほど楽はなきものを、いらぬタワけが起きて働く

樽を枕に朝比奈は、寛々かんかん(ゆったり)とこそ伏しにける

注釈

佐次兵衛は四国をめぐって猿となり
猟師の佐次兵衛が、罪滅ぼしのため四国を巡礼し、最後は猿になったという伝説。
小林の朝比奈
朝比奈義秀。トップの解説参照。
猿隈
歌舞伎で朝比奈が用いる隈取。
鶴の羽
歌舞伎で朝比奈が用いる紋は、羽を広げた鶴紋。
→『小林の朝比奈』豊国 画