朝比奈は手長島の手癖が悪いことを知って、後々のめんどうを恐れて国へ帰そうとする。かといって遠路のことなので、ただ帰すわけにもいかず、ほどほどの路銀をやって追い出した。
これが「手切れ金」の始めという。また、盗みを働く者を「手が長い」というのも、この時から始まった。
朝比奈「いっ時も置くことはならぬ。これを持って出て失せろ。」
背高島「昨日や今日のことかいな。左の腕、右の腕、かいなく旦那こそ損こいた。」
手長島「ああ、面目ない。今、目が覚めました。手が長いのは、鼻の下が長いのよりタチが悪い。ああ、腕が敵の世の中じゃなぁ。頭をかくにも手が重くてかけん。」
背高島「これ、くろさん。おめえの目つきにゃあ、こちとら少し北山しぐれだ。」
くろん坊女「いけすかねぇ。くろん坊だのなんのと言ってくんなさんな。そりゃあ昔のこったぁな。」
くろん坊の女は今は美しきシロモノとなり、ちと、うぬ坊さ。