お江戸のベストセラー

霞之隅春かすみのくまはるの朝日奈あさひな

5

霞之隅春朝日奈 05

※本文の赤字部分は、早稲田古典籍総合データベースで補完しています。

にようごの嶋は
いけでつかはるれ
ともつぶしに
してもかた
いきな
やつはくろ
んぼうの


どふぞ
しかたがあり
さうなもの
と思ふ
うち
此ころ
所々へかんはんを出し
たるおらんだ傳の
あらひこをつかはせ
ければふしぎややみ
のよに月の出たるご
とくうら嶋が玉手
箱をあけたるがことくこん
屋のはかまこなやのねずみと
きてたちまち白くなる
「生れかはつたやうだそふした
所はまんざらでもねへ

「これは
/\と
ばかり
かほのよしの
くずきれい/\

あんまりほめて
くんなさん
なゆめだも
しれねへ

「さう半ぶんあらつた所は二朱みせ
のしるしといふものだ

手長嶋は
酒ずきゆへ
あるよ朝いな
のるすをさい
わいさかだるの
よくねいつたたる
をみすましをく
ざしきより
さかべやまで
さぐつてのみ口
をねくこつちは
ふつとめがさめにくさも
にくしとのみぐちを
おさへ折ふし小べんが
でさうゆへさけと
みせてちやわんへ
小べんをしこむ
手長嶋はしすまし
たりとかの小べんを
さけとおもひぐつと
引かけけるぞこゝちよき
「此ごろはちと熱が
あるから古酒こしゆ
いふ小べんのいろだ

或人曰
さけの出るをとは
ドク/\といふ
小べんの出るおとは
シヤア/\といふ
ぐあんするに
あたかのうたひに
ドクシヤの
口をのがるゝ
とは
此事か