お江戸のベストセラー

悪七変目あくしちへんめ景清かげきよ

8

悪七変目景清 08

傾城けいせい七里ななさと、秘曲をつくして弾きのめしたが、しょせん細工物の目玉、いけしゃーしゃーけろっとして、ちっとも景清の目らしきものはなし。

重忠悩み、再び知恵を絞って、前にも大仏供養に景清が衆徒しゅとに変装して入り込んだので、また大仏供養をして待ち伏せする作戦にでる──しげ印、だんだん策がしょぼくなる。

ちょうどその時、達磨大師だるまたいしが大仏をたずねて鎌倉に来ていたが、目の大きなところを重忠に見とがめられてしまう。いろいろ言い訳しても聞いてもらえず、しかたなく達磨だるま灰汁あくで目を洗ってみせ、やっと疑いが晴れた。
これより、物のさっぱりしたことを『ダルマの目を灰汁あくで洗ったようだ』と言い伝える。

重忠景清が目玉と名のれ! なんとすさまじき眼力!!」

達磨「これじゃ、夜更けの遊女が廊下を歩くように人目を忍ばねば……。こんなところに長居をしたら、だるま目(どんな目)にあうか知れぬ。景清とは、とんだ衆徒しゅと(人)ちがいさ。どうでもしげさん野暮じゃもの、わしをダルマと知らぬとは。」

わっちやるまだでほっすよ。」
なんと松葉屋ことばは、たいしたものか。

注釈

大仏供養
平家による南都焼討で焼失した東大寺の大仏殿を頼朝が再興したときの落慶法要。
江戸のお話では、景清は大仏供養のときに衆徒(僧兵)に変装して頼朝を狙うが、重忠に見破られて失敗する。
しげ印
重忠のカジュアルな呼び名。
達磨大師
禅宗の伝説的始祖。
景清が目玉と名のれ
大仏供養で、変装した景清を重忠が見破るときの決まり文句は「景清と名のれ」。
どうでもしげさん野暮じゃもの
歌舞伎『景清』の「どうでもしげさん粋(すい)じゃもの」のもじり。
わっちやるまだでほっすよ
「わたしは、だるまでござります」
吉原・松葉屋の遊里ことば。「だるま」を逆にして「るまだ」、「~おっす(ござります)」を達磨大師の「払子(ほっす)」とかける。

材木座書房

ぴーちょ

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