捕手の者どもは、目代わり(身代わり)とも知らずに、入れ目所の棚に並べてあった細工物の目玉を持ち帰って来た。この中にきっと景清の目玉がいると思っても、誰も目利きすることができないので、重忠は知恵を絞る。
重忠「なんぼ英雄の目玉でも、妙手の琴を聞くときは涙をためるものだ。細工物の目玉は生ではないから涙は出ない──これで、この中に景清の目玉がいればわかる!」
トボけた理屈をひねり出して、重忠は琴の名手を探しはじめる。やがて和田義盛のはからいで、吉原の京町一丁目、四つ目屋の傾城七里を召して目玉の前で琴を弾かせた。
七里「水晶びいどろの目玉並べし床のうち、泣く子も目をばあけ暮れも、無理なこじつけ書くからに♪」
この絵草紙を、扇屋の片歌さんや菊園さんに見せたいね。
重忠は、まばたきもせず、にら目(にらみ)つけている。
これが『大目付、小目付』の由来である。
重忠「これはまた、吉原の寄り合いで見たのより、白ちりめんのしごき後帯姿は格別美しい! 景清の目より、おれの目が感激だ!!」