あけましてよい春の日のこと、頼朝公は景清がくり出した目玉を畠山重忠にくだされた。
「緒じめにでもしろ。」
生の目玉を押しつけられて、困惑の重忠。
「バカらしい。頼朝さまとしたことが、生の目ん玉がどうして緒じめになるものか。いいものをやろうと言って、だまさしった!」
小娘のような口ぶりで、重忠は目玉を掃きだめに捨ててしまう。
ところが近ごろ、この両目が鎌倉中をウロついているらしい。
「平家のカタキ、頼朝をにらみ殺してくれん。どうするか、長ーい目で見ていろ!」
どうも目玉は、気長な謀反をたくらんでるようす。さすがに放っておくわけにもいかないので、頼朝公は岩永と重忠に一月替わりの捜査を仰せつけた。
重忠「おそらく目玉めらは、今だに納得できないのでしょう。」
<つい立ての文字>
十目所視