隠密回りの役人が訴え出た。
「このあいだ見かけましたが、非人の風体で目の四つあるヤツが町をウロついております。とてもアヤしいです。」
岩永「それこそ、きっと景清だ。前にも非人に変装したことがあるから、こんどは非人の目の上へ入ったとみえる。早々にとっ捕まえて来い!」
岩永の命令で、アヤしいやつがお白州へ引き出された──が!
岩永「おきゃぁがれ(よしやがれ)! そいつは事典に載ってるヤツだ。とんだムダをした。」
役人「見てください! 目が四つあります…。」
蒼頡「そんな、うさんクサい者じゃごんせん。 唐土の蒼頡という者でごんすよ。書道の奥義でも問わっしゃるのかと思いました。ああ、バカらしい。」
『目が多いとて景清でごんすなら、八目うなぎもみんな景清でごんすかの』
という文句が、たしか草摺引にあったな。