お江戸のベストセラー

悪七変目あくしちへんめ景清かげきよ

3

悪七変目景清 03

当月は、岩永の月番。
配下の役人が景清の「目姿」を持って鎌倉の町人へ協力を申しつけている。

役人「急に目のあいたヤツがいたら、召し連れてこい。そのほか、アヤしげな目をしたヤツにも気をつけること。大切な目しうど(囚人)だ。かならず取り逃がすまいぞ。
こちらは詮議の役目、その方どもの目代めだい(代官)、いずれも目に縁のあるやからだ。岡目八目おかめはちもくと言うから、言いつけるおいらより言いつけられるおまえらの目の方が確かだ。」

町人「めくらで急に目のあいたのはござりませんが、町内の道楽息子が親から勘当くらって、このごろよく目の覚めたやつがいます。こいつも召し連れましょうか。
それと近所の芸者が、なんとも色目を使ってきて…もう…たまりません。こいつの目もアヤしげです。」

町人「ハイハイ、かしこまりました。どうも目薬の看板とまちがいそうです。」

注釈

岡目八目(おかめはちもく)
他人の打っている碁をはたで見ている者は対局者よりも八目先まで見えるという意。当事者より第三者のほうが冷静で的確な判断ができるということ。