お江戸のベストセラー

悪七変目あくしちへんめ景清かげきよ

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悪七変目景清 04

岩永は、鎌倉の入口に「人目の関」という新しい関所を据えて、往き来する旅人の目を取り調べた。
六十六部傀儡師かいらいしういろう売り、巡礼、非人など、少しでも景清くさいヤツは特に取り調べきびしく、人面瘡じんめんそうの者なども、腫物の顔に景清の目玉が入っていないかと疑ってかかる。
あざを隠している男、浅黄の頭巾をかぶった者も、かぶり物を取らされた。

岩永上がり目、下がり目、ぐるりと回してネコの目をして、通りましょう。」

六十六部それ、つらつらおもん見れども…見えず。聞けども…聞こえません。明きめくら(文盲)にお恵みを。」

「目がね、目がね。」と、叫んで歩く眼鏡売りの商人あきんどは、目に縁はあっても疑わしいこともないので、関所の前を、のさり、のさりと歩いて行く。

注釈

人目の関
成句「人目の関(人の目が気になって思うままにできないこと)」と、実際の関所をかける。
六十六部
法華経を六十六部書写して全国66カ所の霊場に納めて歩いた巡礼者。
絵では、立って巻紙を広げている男。
傀儡師(かいらいし)
人形使い。箱舞台を首からさげて人形芸を見せて歩く。
絵では、右すみで隠れている男。箱から毛皮のようなものがはみ出しているので「山猫まわし」という見世物と思われる。マギー審司のラッキーくんのような芸か?
ういろう
小田原の透頂香(とうちんこう)という薬。喉の妙薬で口臭も消す。お菓子のういろうとは別物です。
景清くさいヤツ
景清は毎回趣向を凝らした変装で襲撃するのがお約束。ここに出てきた職業は、いかにも景清が変装しそうなもの。
人面瘡(じんめんそう)
ひざなどにできる人の顔のように見えるできもの。
絵では、しゃがんでいる男。ひざにある人面瘡が団十郎(景清の役者)の似顔絵になっているのがちょっと怖い。
上がり目、下がり目~
子どもの遊び唄。今は最後が「ニャンコの目」になっているが、江戸時代からあったことにびっくり。
それ、つらつらおもん見れ
歌舞伎『勧進帳』の一節。安宅(あたか)の関で弁慶がニセの巻物を勧進帳と偽って読みあげる場面。この絵はそれをもじっているので、右すみで隠れている傀儡師はきっと義経。

材木座書房

ぴーちょ

楽しい鎌倉