岩永は、鎌倉の入口に「人目の関」という新しい関所を据えて、往き来する旅人の目を取り調べている。
六十六部、傀儡師、ういろう売り、巡礼、非人など、少しでも景清くさいヤツは特に取り調べきびしく、人面瘡の者なども、できものの顔に景清の目玉が入っていないかと疑ってかかる。
アザを隠している男、浅黄の頭巾をかぶった者も、かぶり物を取らされた。
岩永「あーがり目、さーがり目、ぐるりと回してネコの目をして、通りましょう。」
六十六部「それ、つらつらおもん見れども…見えず。聞けども…聞こえません。明きめくら(文盲)にお恵みを。」
「目がね、目がね。」と、叫んで歩く眼鏡売りの商人は、目に縁はあっても疑わしいこともないので、関所の前を、のさり、のさりと通りすぎて行く。