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鶴岡八幡宮

鶴岡八幡宮つるがおかはちまんぐう

つるがおか八まんぐうはかまくらの
ちうわうにありいにしへは
ゆいのはまにありしをより
ともこうこゝにうつし給ふ
すべてぞうゑいぜんびを
つくしほんぐうはわうじんてん
わうしんぐうくはうごうたけの
うちのやしろよりともの
やしろしらはためうじんといふ
そのほかまつしやおほしいしだん
のしたに大ぼくのいてうのき
ありむかしとうしやのべつとう
あじやりくぎやうこのいてうのき
のかげにかくれてさねとも公を
うちたることあづまかゞみに
見へたり

狂歌

掃溜へおりしならねど
寉が岡塵に
まじはる
   宮居たうとき

「なるほどけつこうなおみやで
ありがたいかみさまではないか
むかしこのしんぜんてしづかごぜんが
ほうらくのまひをしたといふこと
たがほうらくとはちやをほうじる
ものではないかそれをもつて
まひをするのかへ
「なにをいふちやをほうじるのは
ほうらくではないあれはほうろくさ
「それ/\ほうろくよ大さかでは
くじらのあぶらをとつたあとの
みどころをいりがらといつてうりに
くるがそのいりがらはしやうゆをかけ
てめしのさいやさけのさかなに
するがなか/\よいものだからわしが
きやうへいつたときやどやにゐると
そとへいりがらや/\とうつてきた
からこれ/\そのいりがらをかつて
くださいとうがらしじやうゆを
かけてさけのさかなにすると
いふとやどやのおんなどもが
わらひだしてあれはどうして
くはれるものではござりませぬ
ちやをほうじるものでござり
ますといふからそれはと
とびだしてみたらほうろくうり
なぜこれをいりがらや/\とうつて
あるくときいたらイヤいりがらとは申し
ませぬこれはいりがわらといつたので
ござりますといつたから大わらひいたしました