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方言修行むだしゅぎょう 金草鞋かねのわらじ江之島鎌倉廻えのしまかまくらめぐり

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山之内圓覚寺

山之内圓覚寺やまのうちゑんがくじ

ずいろくさんゑんがくじは山のうちに
ありかまくら五山の二ばんめなり
ほんぞんはほうくわんのしやかぶつ
しよどうのがくはみなしんぴつ
なりほうぜうときむねのこん
りうにてかいさんはそうこくの
ぶつくわうぜんじなりけいだい
にしゆくりやうちざぜんくつ
ししがんことうがんなどいふ
めいせきありぶつでんのみな
みのかたにたかさ八しやくの大
がねありところのひとは
りうぐうよりあがりしかね也と
いひつたへたり

狂歌

みほとけのちかひを
むすぶゑんがくじ
かゝるりやくに
おほがねのおと

さんけい
「なんとよいおてらかう/\と
したものだむかしかまくらのはん
じやうのときはさだめていま
ゑどのあさくさのおくやまの
やうにまめぞうや見せもの
などがこのけいだいにもあつた
らうからさぞかしそのじぶんには
にぎやかなことであつたらう
「さやう/\今のおくやまのはまぞう
のせんぞはむかしこのかまくらにて
ゆいのはまぞうといつてゆいの
はまにこやをかけてゐたといふこと
でござりますがいつでもいくさと
いふとはまぞうが出かけていち
ばんにてがらをしたといふことで
ござります
「イヤおまへとんだことを
いふなにいくさのときに
まめぞうがなんのやくに
たつものでござい
ます
「イヤ/\ちがひのないこと
わだがつせんのとき
てきはめにあまるほどの
大ぐんいちどきに
おしよせきたところに
ほうぜうがたはぶせい
にてこれはどうしてこの
たいてきをふせがふと
うろたへまはるところへ
はまぞうのせんぞが

きて
たいてき
わた
くしが
しり
ぞけて

おめに
かけま
せうと
いつてざるを

もつてとんで
出たらそりや
こそざるがまはる
とそのたい
てきが
みなにげて
しまつたと
いふことで
ござり
ます