- 千手の御手 貸し料
- ちょっと貸し 三十二文
- 一昼夜 銀三匁
- 一ケ月 金二両
- 一年貸切り 金十両
- 千手の御手を使っての千手観音のおつぶしは、おやめください
- 下半身に突っ込んでのおにぎり結び、ならびに指人形五人組は、おやめください
- 心中で使用した指の足りない手は、返却をお断りします
- 以上
- 月 日 十七屋講中
千手観音が御手を貸し出すと聞いて、手が欲しくてたまらないヤツらがぞくぞくと押し寄せてきた。
一の谷の戦いで右腕を斬られた平家の侍大将、薩摩守忠度。
「拙者のことは、何も聞かずに "借り人知らず" と書いておいてくだされ。」
渡辺綱に片手を斬り落とされた鬼の茨木童子。
人形芝居で、端役なので手を付けてもらえない捕手の人形。
手のない(客あしらいが未熟な)女郎。
てんぼう政宗。
字の書けないヤツ。
三味線弾きの手習い。
千手の御手が、まるでたくあん漬けのダイコンを干すように吊るしてある。
千手観音
「しなびて落ちたは誰にやろう、彼にやろう、いとしいもんにやりまんしょ♪」
千兵衛
「手相のよい手は、一割増しになります。」
「もし、お足のあまりがありましたら、お貸しくだされ。」