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大悲千禄本だいひのせんろくほん

6

大悲千禄本 06

千手観音

千手観音
「そんなら田村どの、見ごと鬼を退治して千の手を返しておくれ。貸し料を忘れないでね。」

田村麻呂

田村麻呂
「心配ご無用。八本につき一両の借り賃を持って、千の御手をお返しに参りましょう。」

千手観音「それまでは、田村どの──」
田村麻呂「観音さま──」
両人「さらばぁ!!」
手手てん、手手てん、手手てん、手手てん、てて、てて、てて、手手手手手手手手手手手手手手手手手、てててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててててて。

はて、この「て」の字が「め」の字なら、薬師どのへ奉納するのに。

まさのぶ 画
芝全交 戯作

注釈

薬師どのへ奉納
眼病の平癒祈願に「め」の字を書いて薬師如来に奉納する風習。