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お江戸の鎌倉

鎌倉頓多意気

かまくらとんだ いき

 著:桜川慈悲成(さくらがわ じひなり)
 画:歌川豊国(うたがわ とよくに)
刊行:寛政六年(1794)
版元:西村屋与八
底本:国立国会図書館デジタルコレクション『鎌倉頓多意気』

解説(まず、こちらをお読みいただけるとうれしいです。)

<解説>

作者、桜川慈悲成さくらがわじひなりは、江戸後期の戯作者です。多芸多才で知られ、落語や狂歌などでも才を発揮しました。

鎌倉頓多意気かまくらとんだいき』は、鎌倉を舞台に、歌舞伎などでお馴染みの鎌倉武者たちがドタバタを繰り広げるコメディです。鎌倉が舞台の話ですが、この鎌倉は、フィクションの中にしか存在しない、ちょっと特殊な「鎌倉」です。
江戸の滑稽本で歴史物をあつかうときは、対象がいつの時代であっても、背景を江戸時代に置きかえてしまいます。時代考証などは気にしません。たとえ歴史上の人物であっても、お話の中では、江戸弁まる出しのちゃきちゃきの江戸っ子として登場します。
このお話の中の「鎌倉」は、頼朝公が天下を治め、武将は敵味方関係なく頼朝の家臣となっている泰平の世です。しかも、その鎌倉時代の武者たちが、あたり前のように江戸の浅草や深川にくり出したりする、ちょっとカオスな「鎌倉」です。

『鎌倉頓多意気』は、このカオスな「鎌倉」で、頼朝公の頭がでかいことが原因で起こる騒動のお話です。
江戸では、頼朝公は大頭だったという俗説がありました。『平家物語』の「頼朝の顔が大きい」というくだり(巻八「征夷大将軍院宣」)あたりが拡大解釈されたのか、とかく頼朝の頭のでかさは評判でした。
「膝枕、政子の股にしびれきれ」
「拝領の頭巾梶原縫い縮め」
なんて川柳もありました。

さらに、頼朝公の大頭ネタの江戸小咄をひとつ。

回向院に開帳あり。
案内「これは当寺の霊宝、頼朝公のしゃれこうべでござい。近う寄ってご覧くだされませ。」
参詣「頼朝のしゃれこうべなら、もっと大きそうなものだが、これは小さなものじゃ。」
案内「これは頼朝公、三歳のときのしゃれこうべ。」

『鎌倉頓多意気』での大頭ネタは、話よりも絵のほうのインパクトが強烈です。見るだけでも楽しめる、お江戸のシュールなギャグが詰まった絵草紙です。

なお、タイトルは当時流行っていた人形浄瑠璃『鎌倉三代記』のもじりです(…たぶん)

材木座書房

ぴーちょ

楽しい鎌倉