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方言修行むだしゅぎょう 金草鞋かねのわらじ江之島鎌倉廻えのしまかまくらめぐり

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松葉谷安国寺・補陀洛寺

松葉谷安国寺まつばがやつあんこくじ

まつばかやつあんこくしは
にちれん上人ほうしうより
こゝにこもりあんこくろんを
あらはし給ふところなり
こゝにめうほうさくらといふ
めいぼくありさたけやしき
なごしみちのかたにありさたけ
四郎ひてよしのきうせきなり
にちれんすいおさるばたけも
みなこのなごへさかのほとりなり

狂歌

ぢゝばゝのまいりおほきは
たかさごのまつはかやつの
      そしどうにこそ

さんけい
「にちれんさまが此おてらで
あんこくろんといふしよもつを
おかきなさつたといふことだが
わしのほうへたへてきたたん
こぶろんはいろ/\にしてもなを
らぬゆへあんこくろんをおかきな
されたそしさまだからたんこふ
ろんもごぞんしてあらうどうそ
なをりますやうにとおたのみ申したら
そのばんにたんこふはなをつたがまたきんたまへ
たんこふかできてきんたまがふへたからきんの

ふへるは
めてたい
これも
御りやく

あらうと
おれいまい
りに
まいり
ました

補陀洛寺ふだらくじ

てうせうじはなごへさかのにしにありこれより
てんせうざんのやしろふだらくじのくわんおんこのさき
三うらどうすんのしろあとあり

狂歌

此けしきあかず三うらの
   しろあとやうてう
てんせうさんのながめに

「わしはきさまの見る
とほりさけがすき
だからさかやをみる
たびにさけがのみ
たいけれどおれ
ばかりはのまれず
きさまにものま
せるからきさま
だけよけいぜに
がいるゆへわしも
こらへてのみたい
のをしんぼうして
いるがきさまかへる
まではさけを
やめてくれぬか
どうだ/\
「これはだんなには
おなさけない

ことをわたくしさけは
めしよりすきで
こざりますものを
いのちにかへても
やめられませぬ
そのおぼしめし
ならいつそのこと
わたしをころして
くださりませ
しかしそのころす
まへに一はい
のまして

ころ
さるゝは
ほんもう
しんでも
いきかはりしに
かはりゆうれいに
なつてあとひき
にあらはれ
ます