お江戸のベストセラー

霞之隅春かすみのくまはるの朝日奈あさひな

11

霞之隅春朝日奈 11

朝比奈は小人島の細字から思いついて、こんどは大人国たいじんこくを使って百畳敷きの大字興行をしようと、鎌倉中に広告を出した。
やがて建長寺の庭で、大人国たいじんこくに風雅の「雅」の字を百畳敷きの紙いっぱいに書かせると、鎌倉中で大評判となり、われもわれもと見物客が押しよせた。朝比奈は席料をうんとこさというほどせしめ、これでやっと損金をまかなう。

大人国たいじんこく「書法では、ここがこう…エエ、ややこしい。」

「これは、なかなか人間業ではない。大仏でもかなわぬ。」
「ヤンヤ、ヤンヤ……これではどうも三味線をほめるようだ。」