お江戸のベストセラー

霞之隅春かすみのくまはるの朝日奈あさひな

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霞之隅春朝日奈 06

女護島と朝比奈が差し向かいで真面目な話をしていると、急に吹いてきた南風のおかげで女護島が突然色気づいてしまった。女護島は、おこし飴のようにトロけだし朝比奈にせまってくる。

女護島「これ、朝比奈さん。私になびいてくださるなら、かたじけ長押なげし薙刀なぎなただ。水車のように所帯を切り回すぞえ。ほんにおまえは、鬼か人か。」

朝比奈三才図会に『女人国、南風に裸形で当たればはらむ』とあるが、これほどとは思わなかった。キッカイなことがあるものじゃ。」

女護島「恥ずかしいこったが、生れて初めてそんなクドき文句を聞いた。」

朝比奈「べらぼうめ! クドいてるわけじゃねぇ。ああ、息せんな、鼻息で吹き飛ばされる、ああ、くさい!」

女護島「ゆるしてくれ、ゆるしてくれ!」

注釈

かたじけ長押の薙刀
「かたじけない」の言葉あそび。
長押は柱と柱の間の水平材で、薙刀を掛けるところ。
三才図会
中国明代の百科事典。